色々な意味で映画界にその名を刻んだホラー映画「ミッドサマー」。今回はそのあらすじや小ネタなどを解説していきます!ホラー映画において着実にキャリアを重ねるアリ・アスター監督の長編2作目となるこの作品は、幽霊は出てきませんが、観た人間に大きな印象を与える映画だと思います。今回は、通常版とディレクターズカット版との違いも含めて紹介していきます。
それではいきましょー。
※ネタバレを含みます。ご注意ください。
あらすじ
大学生のダニーはパニック障害を抱えていた。恋人のクリスチャンは彼女のことを重荷だと思いながらも別れを切り出せずにいた。ダニーは妹が両親とともに無理心中をしたことで深い傷を負ってしまう。
クリスチャンと友人のジョシュ、マーク、ペレの4人は休暇を利用してスウェーデンに行く計画を立てていた。ペレの故郷であるホルガ村では、90年に一度夏至祭と呼ばれる特別な祭りが行われるという。ひょんなことから4人だけでなくダニーも現地に行くことになる。村は白夜で夜でも明るい。異様な雰囲気に不安が募るダニー。そしてそこで待ち受ける夏至祭はただの祭りではなかった。。。
ホルガ村
一行は夏至祭に先立ち、村にある衝撃の風習を目にします。それは、72歳を迎えた者は崖から身を投げ、自ら命を絶つ、というものでした。あまりの衝撃に言葉を失う一行。しかし村ではそれが当たり前に行われていると説明されます。
村では人生を季節に例えます。生まれてから18歳までの子供の時期は春。18歳~36歳までは巡礼の旅をする夏。36歳~54歳は労働を行う秋。54歳~72歳は人々の師となり教える冬。そしてこの村ではこのサイクルが1年の季節のように延々と繰り返されていきます。72歳を迎えた人間は自ら命を絶ち、再びこの世に戻ってくる、という考えです。
こうした風習があるとしても、初めて儀式を目の当たりにした一行の衝撃は相当なものだったはずです。そしてそれは観ている我々にも同じ衝撃を与えてくれました。当たり前のようにしている村人とは対照的に、同じく村へ旅しに来ていた人達の「狂っている」という反応は、こちらにとっては当たり前で、安心させてくれるものとなっています。
この儀式を境に物語は大きく動き出していくこととなります。
夏至祭
村では女性たちが踊り続け、最後まで倒れなかった人が「メイクイーン」となります。メイクイーンとして花の冠をかぶるダニー。花の冠がまるで呼吸しているかのようにうごめいているのが印象的です。ダンスの前に飲んだ幻覚剤の影響かと思われます。序盤で一行が幻覚剤を使用した時と似たような視覚効果が現れ、不気味さが最高潮に達します。
一方でダンスの様子を見守るクリスチャンの前には、飲み物を勧めてくる女性が。それを一気に飲み干すと、どうも様子がおかしくなってしまいます。これは精力剤で、クリスチャンに好意を寄せるマヤとの性行為を促すためのものでした。
ダニーの結末は?
見事(?)メイクイーンとなったダニー。メイクイーンとしての仕事をするうちに、ある小屋が目につきます。周囲の制止も聞かずドアの鍵穴から中をのぞきます。そこには、マヤと性行為をするクリスチャンの姿が。衝撃で叫び声をあげてしまうダニー。
ラストでは儀式のため必要な生贄をダニーが選ぶことになります。抽選で選ばれた村人か、クリスチャンのどちらかを、女神のための生贄にします。自分を裏切ったクリスチャンに対する思いはすでに決まっていました。ダニーは彼を生贄とすること決めます。
共に村を訪れた4人をはじめとした生贄が入れられた聖殿。火を点けられ燃え上がる様子を見て笑みを浮かべ、物語は幕を閉じます。
これは完全にダニーが村に染まったことを表しています。それまでは村の風習に対して否定的だった彼女が、自ら犠牲者を選び、村の一部として迎え入れられ、本当の居場所を見つけた、ということだと思います。いくら他人と性行為したからと言って殺してしまうのはあれですが。。。
ディレクターズカット版
劇場で公開されたものとは別に、ディレクターズカット版も公開されています。より直接的な性描写やカットされたシーンが複数ありました。いくつか通常版との違いを紹介していきます。
子供が命を捧げようとするシーン
老人が身投げした夜。特別な儀式があると言われ見に行く一行。するとそこでは女神に捧げものをしていた。まだ捧げ足りないという村人。そこに現れたのは一人の子供。「自分の命を捧げる」という。川の側で鎖でつながれ、重りを乗せられた子供。大人が彼を持ち上げ川へ投げ落とそうとします。すんでのところで村人たちは「もう十分だ」といい儀式を終える。完全におかしい村人たちを見て帰りたいと言うダニー。クリスチャンは自分の論文を書きたい気持ちから痴話ケンカをしてしまいます。
子供が犠牲になりかけるシーン。正直ドキドキしました。さすがに子供を、というのはNGだったんでしょうか。
性行為にモザイクなし
終盤、クリスチャンは思いを寄せられていたマヤと性行為をすることになります。通常版だと行為の最中は股間にはモザイクがかけられていますが、ディレクターズカット版ではモザイクがありません。そしてよーく見ると、クリスチャンの性器には血がついているのが分かります。処女であるマヤと性行為をしたため血液がついているというものです。芸が細かい^^;
美しい伏線回収
物語の最初に出てくる村の様子を描いたような絵や、村に干してあるタペストリーは、これから起きることを予知しています。その伏線の回収の心地よさはこの作品の醍醐味です。
好意を持った女性
村では好意を抱いた女性が男性を振り向かせるため、自身の陰毛を食べ物に混ぜたり、飲み物に女性器から出た血液を入れる様子がタペストリーに描かれています。クリスチャンはランチを食べている際に、口の中から陰毛らしきものを見つけます。また、よく見ると彼の飲んでいる飲み物の色が一人だけほかの人の飲み物よりも赤みがかっています。その様子を遠くから見つめる女性の姿が。。。
マヤの部屋にある熊が燃える絵
マヤの部屋に呼ばれるクリスチャン。壁には熊が燃え上がる様子が描かれています。まじまじと眺めるクリスチャン。ラストで熊の中に入れられ、そのまま燃やされてしまうクリスチャンの末路を示唆しています。
オープニングのイラスト
オープニングではイラストが左右に分かれ物語が始まります。このイラスト、これから起こる物語をなぞっているものとなっています。
冬。家族が心中してしまい悲しみに暮れるダニー。彼女を慰めるクリスチャンと遠くで見つめる友人で村出身のペレ。そして一行は村人から歓迎を受けます。最期には夏至祭で踊っている村人たちの様子が描かれています。最初に観た時は?でしかなかったですが、2回目以降、このイラストの意味が分かり、感服させられました。
おわりに
今回は、映画「ミッドサマー」を紹介しました。幽霊の出てこないホラー映画なのでビックリ要素はほとんどありません。安心して家族で観れますね!
アリ・アスター監督は前作「へレディタリー/継承」で衝撃の長編デビューを飾り、2作目となる今回もとても注目されていました。そしてその期待を裏切らない見事な作品を作ったと思います。ところどころにちりばめられた小ネタや映像美、作りこまれた世界観は、観ている我々もホルガ村に連れて行ってくれます。ディレクターズカット版は2時間50分と長いですが、飽きることなく観られる作品です。皆さんもぜひご覧ください!それでは!
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